診療・治療
【目的】卵子体外成熟(IVM)は、成熟卵を得ることができる有用な技術であるが、体内と比較して胚発生能が低いことが課題である。酸素分圧は、細胞のエネルギー代謝や活性酸素種(ROS)産生など、細胞機能に広く寄与するが、とりわけ、卵子は解糖活性が低く卵丘細胞から代謝基質の供給を受けることから、卵子と卵丘細胞の代謝動態を介して卵子の質に影響すると考えられる。しかし、一般的なIVMの酸素分圧は20%O₂下である一方で、卵胞液などの生殖器官内は1-5%O₂であり、乖離している。そこで本研究では、異なる酸素分圧が卵子および卵丘細胞の代謝動態と胚発生能に及ぼす影響を検証し、その知見に基づき二段階気相培養法を確立した。
【方法】ブタ卵巣から卵子卵丘細胞複合体(COCs)を採取した。①20%O₂(HighO₂)または5%O₂(LowO₂)下で44時間(前培養24時間、後培養20時間)のIVMを行い、単為発生後、胚盤胞期まで培養した。②前培養を5%O₂、後培養を20%O₂とする二段階気相培養法(Bi-O₂)を設定し、HighO₂と比較した。
【成績】①MII到達率および胚盤胞率に差は認められなかった。一方で、LowO₂では卵子のATP・脂質含量が増加し、Mt内ROSおよびMt膜電位が低下した。さらに、COCsのグルコース消費量は増加し、卵丘細胞のMtDNAコピー数およびMtタンパク質量は減少した。RNA-seq解析では、解糖系の活性化と、酸化的リン酸化およびステロイド生合成関連遺伝子の発現低下が認められた。②Bi-O₂では胚盤胞率ならびに卵子のATP・脂質含量が増加した。一方、グルコース消費量およびMt膜電位に差はなく、MtDNAコピー数は減少した。
【結論】IVM初期の低酸素暴露は、COCsの代謝を解糖系優位へ変化させ、エネルギー基質蓄積を促すことで卵子の質を向上し、結果として胚発生を促進する。