診療・治療
【背景・目的】
本邦では、micro-TESE施行前にAZF解析を行うことが強く推奨されている。検査結果は精子回収率の予測に重要だが、実臨床では定型的なパターンに合致しない判定不能例や染色体構造異常も重複しているケースを経験する。本研究では、これら非典型例の転帰と核型分析を併用する臨床的意義を報告する。
【方法】
2022年7月から2026年2月末までに、AZF解析および核型分析を実施した124症例を対象とし、診療情報を基に後方視的に検討した。
【結果】
欠失なしが68例(54.8%)、gr/gr欠失が43例(34.7%)であり、既報と同程度の頻度であった。欠失ありは8例(6.5%)、判定不能は5例(4.0%)であった。欠失ありの8例中3例、判定不能5例中1例は正常核型ではなかった。判定不能のうち3例はAZFc領域の部分欠失と考えられ、うち2例でmicro-TESEを施行した。結果、1例では精子を回収できたが、1例(G-band : 47,XXY)は精子を回収できなかった。
【考察・結論】
AZF解析と核型分析の併用には課題と利点がある。核型分析でAZF領域の欠失が明らかな場合、AZF解析は結果が自明となりコスト面でデメリットとなる。一方で、段階的検査は費用を抑えられる反面、結果判明までの時間や来院回数が増大するため、当院では同時施行による利便性も考慮し運用している。判定不能例であっても精査により精子回収に至る例が確認されており、核型分析との併用はより詳細な情報提供を可能にする。遺伝カウンセリングにおいては、検査の効率性と不確実性を適切に提示するとともに、精子非回収時の養子縁組や精子提供、子どもを持たない選択など、多様な家族形成に関する意思決定支援を継続的に行う体制が重要である。